大切なものは

第 24 話


「というわけでスザク、これが買い物リストだ。お前が持って帰れる量をリストアップしている。これが目的の店だ。ここから下は14時からのタイムセールになる」

そう言って、買い物リストを手渡した。
鍋や包丁、調味料などはナイトオブワン経由で通販したが、食材は注文しなかった。理由は簡単だ。今日はビスマルクに事前に話をしていたから荷物をすぐに受け取れた。まずビスマルクが荷物を受け取り、スザクに連絡が行き、軍の資材を装いここまで運ぶ。今日のようにビスマルクの時間のあきがタイミングよくあればいいが、いつもそうとは限らない。保存食ならいいが、生鮮品は頼む訳にはいかないし、万が一中を確認されてしまえば敵側に怪しまれてしまうかもしれない。

「・・・これを全部買ってくればいいのか?」

スザクは眉を寄せ、不満そうに言った。
おそらく想定以上の量だからだろう。手伝うとは言ったが、ここまで使われるつもりはないとでもいいたいのか、あるいは。

「・・・ああ。大丈夫だ、冷蔵庫も冷凍庫もこの量なら問題ない」
「いや・・・うん、わかった」

納得したスザクはすでに私服に着替えており、メモを財布にはさめポケットに入れた。

「じゃあいくよ」
「わかっている」

そして、ルルーシュはジュリアス・キングスレイとして、ナイト・オブ・ラウンズの衣装・・・とは若干違うが、ジュリアスの黒い軍服に身を包んでいた。記憶が戻ってから改めて思ったのはこの衣装と眼帯の扱いづらさだ。特に眼帯は普段用はボタンで止められるのに対し、こちらは紐。記憶が戻る前はどうやって縛っていたんだ!?と思うほど、片手では難しい作業だった。
いつまでも準備が終わらないルルーシュに苛立ったスザクが、自分でやると意地になっていたルルーシュから眼帯を奪い縛った。お陰で蝶結びは斜めになっているしバランスも悪いが、仕方ない。裁縫道具を入手し、ボタンかマジックテープ、あるいは紐をゴム製に作り変える予定だ。
そんな二人は並び歩き、ラウンズの控室へとやってきた。

「あれ?スザク、と、ジュリアスじゃないか」

控室にはジノとアーニャ、モニカがいた。
ジノはにこやかに笑い、手を振っている。

「ジュリアス、話は聞いていると思うけど、これがヴァルトシュタイン卿から預かった資料よ」

モニカはテーブルの上に積み置かれた資料を指し示した。
ルルーシュがこの部屋で待機する都合のいい理由を作るため、ビスマルクが用意したものだ。・・・その資料は、ルルーシュが襲撃を受け腕と目を失ったというあの事件の資料。偽りだらけの報告書。それらを調べ、暴くようにということだった。じっさい、ビスマルクや皇帝の文官達はほころびを見つけることができなかったと言う。間違い探しと謎解き、パズルゲームか。いい暇つぶしだ

「ああ、聞いている」

ルルーシュは、資料が積み上げられた席の隣に座り、資料を1冊手に取る。ラウンズ控室に控えている侍女が紅茶を入れて持ってきた。さすがにここで毒入れないだろう。そんなことをすれば、皇帝の騎士が毒をもられただけではなく、ラウンズがいながらそれが防げなかったこと、そして警備の甘さがラウンズの汚点となる。
ルルーシュを排除するためにラウンズに傷をつけたりはしないだろう。
犯人の目的はあくまでも、庶民出の后妃とその嫡子の排除だ。
ナナリーはすでに両足と両目を失い、いつでもどうにでも出来る。
だから、狙われるのは1人だけ。
わかりやすい。
だから、対策もしやすい。
人質として使われる可能性は今後もあるが、相手は人質でこちらの動きを封じて嬲り殺しにするより、こちらの裏をかき、隙をつき、罠にはまる姿を見てあざ笑いながら嬲る方を好んでいるように思える。
資料を読み進めている間、アーニャに写真を撮られ、ジノが色々話しかけてきたが軽く流して情報をひたすら読みすすめる。これらの資料はこの場でしか見ることが出来ない。いや、今日しか見れないと言うべきか。すべての内容を暗記するのが優先。考えるのはあとでも出来る。
これは、失われた腕と目の犯人だけではなく、マリアンヌ暗殺の犯人につながる情報なのだ。必ず見つけてみせる。母を殺し、ナナリーを傷つけた犯人を。

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